不器用な君と不機嫌な私


「おーっす。お前ら席座れー、そんでもって黙れよー」


入ってきたのは、スーツを着た男。

ようするにこのクラスの担任らしかった。



誰であろうと、このタイミングに教室に入ってきたことは
これ以上なく嬉しかった。


名前も知らない先生だけど、
全力でお礼が言いたくなった。


「えーっ!!広瀬じゃーん!!なになに、もう担任持てるほど偉くなったわけ!」


またもわたしは唖然とした。



本当に、なんなの


この女。


椅子に貼られたシールには

西村郁と書かれていた。


すると先生は思い切りため息をつく。

その姿はどこかキョンと呼ばれる生徒と似ていた。


ため息をつくのに慣れているような。




「はいはい黙ろう、な、西村。
お前の今年の目標はまず黙ることからだ。」

「えーっ無理~」

「無理じゃない。」



どうしてなんだろう



どこかだるそうな


それでも
優しそうなその表情に


私は見入ってしまった。


「ったく…濃いな、このクラス」



そして小さく呟いた。

それでも笑っているのだ。
優しく、小さく。