空いた口がふさがらないとはこのことだ。
何言ってんのこの女
「は…?」
「郁も愛想笑いうまくなりたいんだよねー!
っていうか香織ちゃん絶対上辺だけの付き合い得意でしょ!いーなー、かっこいいーっ!」
もう、なにも言えなかった。
まず愛想笑いだということも、上辺だけの付き合いが得意なことも、見抜かれていることに驚いた。
それともうひとつ。
そんなことをずけずけと言葉にしてしまうこの女にも、驚いた。
というより、あり得ない。
「ねーねー」
「………」
「ねーってばー、香織ちゃーん?」
うるさい黙れ
このピエロ女!!!
と言ってやりたかったけど、できるはずがなかった。
1つ深呼吸をして、気持ちを落ち着かせたとき、前のドアがゆっくりと開いた。

