「そんなことないけど」



「だって郁のこと、見てない。」


郁の指に力が入る。

初めて、

この手を離したいと

思った。


「自意識過剰ってやつじゃない。

閉会式行こう」


一瞬の隙をついて、するりと手を離す。


行こうと言っておきながら

郁を置いて早足でその場から離れた。



ダメなんだ、郁



郁が繋ぐ手はこの手じゃない



まだ彼女の

手首の細さが残る手のひらを

見つめて、握りしめた。





「キョンの…………バカ。」