ありがとう


「圭介くん、どうしよう…」
泥だらけの美咲の顔はひきつっていた。

「もう下りるのは無理だ。とにかく少しでも安全な場所を探そう」
彼は吐き気がするほど動揺していたが、それを無理やり押し殺して冷静に言った。

表情が常に死んでいるのがここまで役立ったときはないなと思った。

笑い顔はもちろんのこと、焦っているときですら表に出ないのだ。