ありがとう


彼には何が起きたのか分からなかった。

急に振りほどかれた腕は自分の意思とは違う方向へ進行を変え、バランスを崩して倒れそうになるのを左足で無理やりに地面を踏みつけて耐えた。

「何してんだ!早く逃げないと!!
彼は怒鳴るように叫んだ。
そう言った瞬間に彼女が反応した。

「うるさい!!!」

彼の叫びよりも激しく彼を怒鳴り付けた。

その声はまるで殺意に似たものを感じさせるほど鋭利なものであった。

彼は意表を突かれ、一瞬だけ意識が飛んだような気がした。