ありがとう


腕時計に目をやると、もう既に9時を回っていた。

「家に帰らなくて大丈夫なの?」
彼にとっては聞きづらいことであったが、聞いておかなければまずいと思ったのと、何とか沈黙を終わらせたかったというのがあった。

「そうね。そろそろ」
膝を抱え込んで座っていた彼女が、その手をほどきゆっくりと立ち上がった。

「圭介くん。明日もここにいるの?」
お尻を覗き込みながら軽く埃を払い、そのあとに手を払った。