ありがとう


「私、美咲っていうの」
「あなたは?」
先に口を開いたのは彼女だった。

「上山」
「上山圭介」
彼はすぐに答えた。
胡座をかいた膝に肘を付き、頬杖をした状態から軽く首を女のほうに曲げた。
酷い猫背だった。

「笹川美咲だよ」
「よろしくね」
彼女も再び答えた。
にっこりと笑っていたが、どこか寂しげなようにも見えた。

再び長い沈黙はやってきた。