糸を垂らすだけで魚は釣れた。 向こうはただいつもの食事をしただけなのだから、当然といえば当然だ。 その中にたまたま針が入っていただけに過ぎない。 隣ではしゃぐ彼女を横目に見ながら、そんなことをボーっと考えていた。 ここ数年の間、人を始め動物や虫までもの『死』というものをよく考えるようになっていた。