「それで魚でも捕ろうとしてたの?」
『無邪気』という言葉が一番的確だろうか。到底真似の出来ない笑顔を作り出す。
きっと彼が同じことをすれば顔中が痙攣を起こしてしまうだろう。
「え、あ…。あ!」
右手には、先端を切り落とされた惨めな竹が握られたままになっていた。
「それじゃ流石に無理でしょう。ちょっと待ってて」
そう言い切る途中でくるりと背を向け走り出した。
ワンピースがひらりと僅かに舞い上がった。
先ほど手を振っていた橋の向こう側へ消えていく後ろ姿を、見えなくなってからも暫く眺めていた。
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