ありがとう


彼は一瞬で状況を把握した。それと同時に冷静でいられなくなっていた。

突然、痛いほどの熱いものが込み上げてきたと思うと、大粒の涙が止めどなく溢れ出した。
視界が歪み、頬を伝って顎から落ち、アスファルトに染みを作った。

「どうしてだよ!!面倒見てくれるって言ったじゃん!!なんで…なんで……」

行き交う人混みの中で泣きながら怒鳴り散らした。

喉に激痛が走った。

「僕はあんたを信用してたのに……なんで…なんでなんだよ!!!」

そのままヒゲに殴りかかろうとしたとき、警官に強く腕を握られ阻止された。