ありがとう


彼は「ありがとう」と礼を言うと、軽く頭を下げながら男の容姿を満遍なく見つめた。

胡座をかいた太ももの下から見える裸足は、アスファルトの上をどれほどまでに歩いたのか、マメの上にマメが重なり続けたように固そうな皮膚に覆われていた。

肌の色はとても黒く、ぼろぼろに破れた作業ズボンからは傷だらけの脛が見えた。

上半身はこれもまたぼろぼろで、元は白いワイシャツなのだろうが、もはや色褪せた黒いワイシャツのようであった。