ありがとう


「俺の名前は岩下ってんだ。だけど仲間からは一度も呼ばれたことねえんだ。いつもヒゲって言われてる。お兄さんもそう呼べばいいよ。で、お兄さんは?」

なるほどそのとおりだと思いつつ、僕は旅立つ前に決めていた名前をすぐに呟く。

「圭介…です」

「ふーん。じゃあ俺は食いもんとか探して来るからよ。お兄さんはそこで寝てな」

ヒゲは振り向き様に手を上げると、公園の外へ向かって歩き始めた。
結局お兄さんのままだった。