計画を立てたのは2年と3ヵ月間、実行に移したのは5時間前だ。

もちろん決定的な原因に家庭に嫌気が差したのがあるのは言うまでもないが、それ以外に大きなきっかけなどなかった。

強いて言うなら日々の小さな積み重ねが、結果的に大きな塊を生み出したのだろう。

彼は家を出ること自体には微塵の抵抗も感じなかった。

ただ1つだけ気がかりだったのは3年前に我が家にやって来たモルモットの存在だ。

ぶっきらぼうに「モル」とだけ名前を付けて適当に世話をしていたのだが妙に懐いていた。

ケージに前足を掛けて全身を突き上げ、柵の隙間から覗かせる鼻の頭を撫でたときに「プイップイッ」と鳴く姿が何とも愛らしかった。