ありがとう


彼はじっと耳を傾けていた。

なんて返していいか分からない。
だったらせめて話だけは真剣に聞こう。そう思っていた。

「暫くしたら凄い雨が降りだしてきたんだけど、もう動くのも嫌でずっとそこにいたの。

川がどんどん濁ってきて、あっという間に見たこともないくらい氾濫した。

それ見てさ、その中に飛び込めば絶対死ねるだろうなって思った。

もう生きてても何もないし、今度こそ実行しようって思った。

今度こそ、今度こそ…って」

彼はあのときライトに照らされた生気が感じられない人影を思い出していた。