ありがとう


彼は、嫌な思いばかりをしていた自分を思い出した。
そこにも確かな幸せが存在していたのに、自分が気付いていなかっただけということを、今この瞬間に悟った。

不幸にばかり目が行き、鼻先にある幸せを見失っていた。

冷たいものが頬を通り抜けて落ちた。

渇いた地面に反発されながらも徐々に吸い込まれていった。

彼には、拒絶され仲間はずれにされていた人間が、受け入れられ輪の中に招かれた瞬間のように見えた。