おおよそ3時間は経っていた。
待つことに慣れてしまった彼にとって、さほど苦でない時間ではある。

自分とは別の意思を持っているとさえ疑わせる首を、顎を突き上げながら強引に起こし、ゆっくりと瞼を開く。

電灯に照らされた恐らく虫であろう黒い塊が、わずかに葉を通して透けて見えたが、ぬるい風が吹くとともに姿を眩ました。

眼球だけを動かし、その正体を探したが、何人たりとも邪魔をされずに居座り続ける雑草達が捜索を打ち切らせた。

湿った地面に尻を置いたまま遠くを見下ろすと、暗がりの中で見知らぬ街が眠っていた。
まるで自分だけがこの世に存在しているかのような何とも表現し難い錯覚に陥らせた。