本庄さんは、背筋をピンと伸ばしてお屋敷へ入って行った。そのモデルさんのような後ろ姿に見惚れていたら、


「お嬢様のご住所はどちらでしょうか?」という黒崎さんの声が聞こえた。


一瞬、誰に聞いているのか分からずボーッとしていたら、運転席に座った黒崎さんが、後ろに体を捻って私を見ていたので、それで漸く私に聞いたのだと分かった。

だって、今まで人から“お嬢様”なんて言われた事ないから。


「あ、はい。えっと……」


今度こそ、黒崎さんに私の家の住所を言おうとしたんだけど、


「家(うち)に行ってください」


という柏木君の言葉で、またしてもそれを阻まれてしまった。

でも、どうして柏木君の家に?