柏木君に抱き上げられたまま中庭に行くと、黒塗りの車が停まっていて、側に紺のスーツをきちんと着た男の人が立っていた。


私達が近付くと、その人は

「坊ちゃん……?」

と言って、目を見開いていた。


「開けてください」と柏木君が言うと、「あ、はい」と言って男の人は後ろのドアを開け、私は車の中にひょいって感じで入れられた。


後部座席には本庄さんが座っていて、私を見て目を真ん丸にしていた。


「あなた、大丈夫?」

と言われ、“大丈夫です”と言おうとしたら、

「大丈夫じゃないわね……」


と本庄さんは言いながら、私の姿をしげしげと見た。


私は恥ずかしくて、破れたブラウスの胸元を手で隠しながら縮こまっていると、後ろでゴンという音がして、柏木君が私の隣に乗り込んで来た。