柏木君の整った顔があまりに近くて、驚いたのと恥ずかしさで下を向いたら、柏木君の指が私の顎の下に添えられ、クイッと顔を上げさせられてしまった。


「か、柏木君……?」


私が声を掛けても、柏木君は無言で私を見つめるだけ。


無表情の彼からは、何も感情らしいものを感じる事が出来ず、私はただ、彼の漆黒の瞳に見入っていた。


すると、柏木君の顔がゆっくりと、更に私に近付いて来た。


あ……、キスされる?


そう気付いたものの、まるで魔法にかかったように、私は体を動かす事が出来なかった。


そして、柏木君の吐く息が私の唇にかかった時、私はそっと目を閉じた。