「ちょっと、美咲!」


「え?」


理恵の大きな声で、私は我に返った。

周りの人達は、目を丸くして私を見ていた。それは当然の事だと思う。今日来たばかりの転校生から告られて、“はい”なんて言ったんだから。しかもみんながいる教室で……


「わあ、違います。今のは嘘です。冗談と言うか、私なにやってんだろう……。急に言われてびっくりしちゃったというか、とにかく今のは、なしです」


と私は早口で言ったのだけど、


「ダメだね。君は確かに“はい”と言ったんだから、今から俺達はカレカノってやつだ」


冷めた顔の柏木君からそう言われてしまった。


「そんな……」


助けを求めるように理恵を見ると、


「諦めて付き合ってみれば? 女に二言はないんだから」


と言われてしまった。愉快そうな顔で。

それを言うなら、“男に二言はない”だと思うけど。