初恋の行方〜謎の転校生〜

私が小さい声でそう言うと、

「じゃあ、誰なの?」

と母は詰め寄った。


「それは……」

「柏木隼人君なのね?」

「う、うん……」

「という事は、あの日美咲の帰りが遅かったのは、理恵ちゃんの家に行ったんじゃないわけね?」


「はい……ごめんなさい」


「あなたがそんな嘘つきだったなんて、お母さんがっかりだわ」


「違うの! 嘘をついたのは良くないけど、あの日は事情があって、お母さんに心配かけたくなくて、仕方なく嘘をついたの」


「そう? じゃあ、どんな事情か話してみて?」


「それは後でちゃんと話すから、今は彼に電話を掛けさせて?」


私がすがるように母を見つめると、母はフッと微笑み、


「わかったわ。ちょっと待って?」


と言い、メモ用紙とボールペンを私に差し出した。


「これに番号をメモしなさい」

「うん」


私は急いで、でも慎重に、隼人さんの携帯の番号をメモ用紙に書き取った。


そして、「ありがとう」と言って2階に戻ろうとしたら、「待って?」と、母に呼び止められた。