やっぱりそうなんだ……

本庄さんのあの様子では、簡単に諦めたりしないと思う。それに、本人の意思でも、婚約は変更出来ない、って言ってたし……


「暗い顔して、どうした?」


「え? ん……私にはよく解らないけど、本庄さんとの婚約って、家同士が決めた事なんでしょ? 簡単に解消は出来ないんじゃないかな、って……」


「そうかもな。祖父さんと話し合って、もし決裂したら俺はあの家を出る」


「え? じゃあ九州でお母様に言ったお祖父様との話し合いって、その事だったの?」


「そうだよ。おまえに紗耶香さんの事を言いたくなくて言わなかったんだ」


「でもお母様は、家を出るのはやめてほしいって言ってたよね?」


「そうだけど、仕方ないだろ? それともおまえは、俺は紗耶香さんと結婚した方がいいと思ってるのか?」


「それは思ってないけど、もし家を出たらどうするの? 九州に行くの?」


「いいや。こっちで一人で暮らす。働いて」


「大学は?」


「わかんねえ。行けたら行くけど、食う方が先だな」


それでいいのだろうか。
それで柏木君は幸せになれるの?

柏木君だけでなく、みんなが不幸になるんじゃないかと、その時私は思ってしまった。