「でも、そういう生き方が嫌になったんだ。自分の人生じゃないみたいで。例えば結婚なんてまだ考えられないし、するとしても好きな女としたい、かなって……」


そう言って柏木君は頭に手をやり、サラサラの髪の毛を指で梳いた。照れ臭そうに。

“好きな女”って、もしかすると……、私?


なんて、自分に都合のよい事を考えてしまい、私は顔がカーッと熱くなってしまった。


「だから、まずは紗耶香さんとの婚約は解消した」


「ほんとに?」


思わず私は聞き返していた。だって、さっきの本庄さんは、そんな事は全く言ってなかったから。


「ほんとさ。昨日、帰りに紗耶香さんに会って、はっきり言ったんだから」


「でも……」


「ん?」


「本庄さんは何て言ったの?」


「それはまあ……、納得してなかったけどな」