本庄さんと話をした事は、柏木君には言えないと思った。それをすると、柏木君が怒るって本庄さんが言ったから。

今朝、飛行機代の事で柏木君は確かに怒った。そしてその後、彼と私は気まずくなってしまった。あんな事はもう、嫌だから……


「何でもない」

「そんなわけないだろ? おまえ、泣いてるじゃねえか」

「何でもないんだってば……」


そう言いながらも、私の目からは涙が後から後から溢れては頬を伝っていた。


「ここじゃ何だから、あっちへ行こう?」


そう言って、柏木君は私の肩に腕を回した。


彼が“あっち”と言ったのは、待ち合わせていた児童公園だった。

私ったら、そこを通り過ぎそうになり、それで柏木君に呼び止められたらしい。