車を降りた私は、俯き気味に呆然としながら路を歩いていた。

本庄さんから言われた言葉の数々が、次から次へと頭の中を木霊していた。


婚約、浮気、愛人、当主、柏木グループ、総帥、伴侶、柏木君の将来……


「おい、どこへ行くんだよ?」


不意に男の人の声がして、誰かに肩を掴まれてしまった。


顔を上げると、柏木君が私を見下ろしていた。ちょっと怒ったみたいな顔をして。


そんな彼を見上げていたら、涙がジワッと出て来てしまった。


「ど、どうした? 何かあったのか?」

「柏木君……」

「もしかして、また奴らにやられたのか!?」


“奴ら”?

ああ、佐藤君達のことか……
私は「ううん」と言って、小さく首を横に振った。


「じゃあ、どうしたんだ?」