「頑張ってね」


「うん。ありがと」



小さく手を振る彩乃に、あたしはそっと微笑んだ。



「失礼、します……」



今日は、逃げるわけにはいかないんだ。



「次は押端だな。じゃあ、ここに座って。資料探すから、ちょっと待っててくれるか?」


「はい」



あたしは、小さく頷いた。



軽く周りを見回してみる。


あたし以外にも、先生と向き合う生徒が、何人か目に入った。



今、職員室に頼城先生の姿はない。


部活にでも行ってるのかな?



ただでさえ緊張しそうなこの状況だから……

頼城先生がここにいないのは、あたしにとって好都合な気がした……――――




「おっ、あったあった! それじゃあ、進路相談始めるぞー」



明るい森田先生の声が、紙をめくる音と一緒に耳に入ってきた。