「……」


少女がこちらを向く。


何だか、虚ろげな少女だった。雄大の最初の印象はそれ。


力ない目に、何を考えているか分からない無表情。白すぎる肌に、白いワンピースを着ていた。


「……」


「ねえ、お父さんかお母さんは?ん?」


少女が雄大の頬に手を当てた。


「――、欲しい」


空気を揺るがす声。

それもそのはず、少女の言葉は特殊だった。


“巡り廻る言葉”(スペル・フォルトゥナ)

言霊である。


少女は悪魔だった。欲しいとは雄大、欲するは雄大の血肉。


「甘い、甘いの、いっぱい、いっぱい、ちょうだい、もっと、いっぱい」


人食の悪魔。

言霊により、相手の脳を侵食し、自害させる上位の悪魔だった。