永劫の罪人 光の咎人

 また?
 自分で言っておきながら、自分の言葉にマテリアは驚く。

 また、ということは、昔もハミルを置いてどこかに行こうとしていた?

 だんだん頭が痛くなってくる。鋭くなっていく痛みが、浮かぼうとしていた記憶を沈めていく。
 マテリアは顔をしかめ、額を押さえる。

「焦るな焦るな。時間は十分にあるんだ、これからゆっくり考えればいいって。でも、これだけは忘れるなよ。過去は過去だ、大切なのは今なんだからな」

 そう言いながら、ビクターはマテリアの頭をなでる。
 まるで兄妹……いや、親子のやり取りだ。くすぐったいところが、ひどく安心できた。

「ありがとうビクター。しっかり考えておくよ」

 肩から力を抜くと、頭痛は一瞬で消える。
 深呼吸をして気持ちを落ち着けると、マテリアは元気に笑ってみせた。

 ビクターが安堵したように、大きく長い息を吐く。
 と、おもむろにビクターがマテリアの手をにぎる。

 急に手が温もりに覆われて、マテリアは目を丸くした。

「ビクター? 別に手をにぎらなくても、私ははぐれないぞ? 小さな子供じゃないんだから」

「この流れで、どうしてその言葉が出てくるんだ。本っ当に色気のないヤツだな。そういうつもりじゃない」

 ビクターは一度苦笑してから、ふと真顔になった。

「ちょっと、渡したくないと思ってな」

「……何を言ってるんだ、ビクター?」

「いや、何でもない。さあ早く宿に戻ってメシ食うぞ。腹が減りすぎて調子が出ねぇ」

 腑に落ちないマテリアを無視して、ビクターはにぎった手を強く引き、人の洪水へと身を投じる。

 すれ違う人と、どれだけ肩がぶつかっても、行く手を遮られても、はぐれる気はしなかった。