永劫の罪人 光の咎人

 考えないようにしていた現実を、ビクターから突きつけられる。
 思わずマテリアは視線を逸らして言葉を探す。

 けれどいい考えも、現実から逃げる言葉も浮かんではこない。
 低くうなっていたマテリアの肩に、ビクターが手を乗せた。

「ハミルと会うときが一番嬉しそうなのは認めるが、あんな教会に囲われて、百年後の世界をよく知らない箱入り男が、お前に何をしてやれるんだ? そう思うから、正直オレはハミルを好きになれねぇ」

 思わぬ言葉に、マテリアはビクターの目をじっと見つめる。

「ビクター……」

「オレが甦らせた手前、お前には幸せになってもらいたい。そのためなら、何でもつき合ってやる。この世界で生きていく手段も、知識も、必要なだけ教えるつもりだ」

 ビクターの声は静かで優しいのに、気圧されて何も言い返せない。

 浮かれていたマテリアの心が、急に落ちこんでいく。
 ただハミルと会って話ができれば、それでいいとしか思っていなかった。

 一体、自分はどう生きたいのだろう?

 マテリアが考えを巡らせている最中、ビクターが「もしよければの話だが」と、歯を見せて笑った。

「オレと一緒に世界を旅しないか? 面白いぞー。前に言った汽車にも乗れるし、見たことのない食べ物もいっぱいある。街も、建物も、そこら辺に生えている雑草でさえ全然違う。一生かけても全部楽しみ切れないんだぞ。どうだ?」

 世界を旅する……すごく魅力的だ。想像しただけでも胸がワクワクする。
 マテリアは思わず瞳を輝かせる。

 この国を出たことがないから、外の世界には興味がある。
 小さい頃、街で流行っていた旅行記をハミルから読み聞かせられたときも、今みたいに胸を高揚させていたのを思い出す。

 一度だけ自分がうなずけば、それで外に行ける。

 けれど、ハミルと離れなくてはいけない。

 不意にぼんやりと、マテリアの脳裏に記憶が浮かんだ。

「行ってみたいけど、またハミルを置いていくなんて――」