永劫の罪人 光の咎人

 急に送られた視線に、ガストがあわてて背筋を正す。
 緊張する彼の気持ちがロンドにはよくわかる。あの秀麗な顔に見つめられたら、誰だって冷静でいられない。

 珍しく「あ、その」と言いよどんでから、ガストはひとつ咳をして調子を整える。

「ハミル様。今、実家に手紙を出しておりまして、身内にアスタロという人物がいたかを調べています。返事が戻り次第、報告いたします」

「ありがとうございます、ガスト。もし貴方の身内であったら、彼のお墓の場所も教えていただけますか? 墓前であっても、せめて彼には私たちのことを伝えたいですから」

「……ああ、そうだよな。もしアスタロが生きてたら、今頃は百十八歳? さすがに生きてないか」

 頭ではわかっていても、心は追いつかないのだろう。
 嬉々としていたマテリアの顔は曇り、地へうつむいた。

 ドンッと、いきなりビクターがマテリアの背を平手で叩き、強引に顔を上げさせる。

「もっと前向きに考えろよ。もしガストがアスタロってヤツの血縁なら、少なくとも結婚して、子供持って、いい人生送ったってことだろ。それに生きてる可能性だってわずかにあるしな。俺が知っている限り、百三十歳まで生きたヤツもいるんだぞ」

 そんなに長生きした人間を、ロンドは聞いたことがなかった。
 きっとマテリアを元気づけようと、嘘をついてるのだろう。
 態度は軽いが、ビクターは意外と気づかいのできる人だ。

 人の優しさを見られるのは嬉しい。
 ロンドがひそかに胸を温めていると、目の前に日差しを弾いて輝く小川が流れていた。

「この川、まだあったんだ! ひさしぶりに……」

 マテリアは靴を脱ぎ、ズボンの裾を膝まで上げると、そのまま走って小川に入っていく。

「ふー、冷たくて気持ちいい。ハミル、川藻を採ればいいか? 確か薬になるんだろ?」

「うん、お願いするよ。じゃあ私たちは――」

 辺りをゆっくり見回し、ハミルは頭上で視線を止める。そうして木の上を指さした。