ロンドが内心、自分の理解を超えた話に圧倒されていると、ビクターから呆れたようなため息が聞こえてきた。

「……小さい頃からすさまじいな」

「……同感だ。一歩間違えば失明してるだろ、あの左顔の傷は」

 同じようなため息が、ガストからも返ってくる。
 そんな周囲の呆れをよそに、マテリアはほがらかな声で話し続ける。

「私の住んでた村は、ダットの街から山ひとつ越えたところにあって、いつも山越えしてこの森に通ってたんだ。道すがらウサギやら山賊を狩ったりしてたなあ。本っ当に懐かしいな」

 次々と出てくる少女の過去とは思えない話に、ロンドもあ然となって言葉が出てこない。

「狩りをしていたのは知ってたけど……山賊も狩ってたのは初耳だよ。危ないじゃないか」

 にこやかだったハミルも、額を押さえて苦笑する。
 そんな周りの反応にめげるわけもなく、マテリアは肩をすくめる。

「あっちから勝手に現れるんだから、仕方ないよ。それにアスタロも一緒だったし」

「アスタロ、か。マテリアと会えたことも驚いたけど……」

 ハミルがガストへ瞳を流し、再び笑みを浮かべた。

「まさか、アスタロの顔とも会えるとは思わなかったよ。本人じゃないのは残念だけど、本当に瓜二つだね」