柔らかな緑の葉をつけた木がまばらに並ぶ道を、ロンドたちは足取り軽やかに歩いていく。

 教会の裏手に広がる森は、木もれ日が重なりあい、鬱蒼とした暗さを打ち消していた。
 薄雲が日ざしを和らげているおかげで、辺りに漂う陽気は誰の身にも心地よかった。

 意気揚々と歩くマテリアが、声を弾ませる。

「うわー懐かしい。よくこの森にきて三人で遊んだな。初めてハミルと出会ったのも、この森だったよな?」

 マテリアの隣を歩いていたハミルが、わずかに顔を向けて微笑んだ。

「そうだね。私が森で薬草を摘んでいたら、突然マテリアが木の枝にぶら下がって現れたから、すごく驚いたよ」

「最初はハミルが珍しくて眺めるだけだったなあ。けど、ハミルが大山猫に襲われそうになって、私がかばって追い払って、そこから仲よくなったよな」

 マテリアは左の傷跡をなで、苦笑をこぼす。

「あの頃は私が弱かったせいで、あんな大山猫なんかに不覚を取ったよ。ハミルが無事だったからよかったけど……今なら何匹でも相手にできるのに」

 二人は和やかに話しているが、はたで聞いているだけで、痛々しくて血の気が引いてしまう。
 この話を聞いていると、マテリアが少女ではなく、野生味あふれる少年に見えてくる。