ロンドと別れて、すぐにハミルは中庭の大樹のところへ向かう。
百年前も生えていた大樹。昔よりも大きくなったが、濃い緑を茂らせ、静かにたたずむ姿は変わらない。
あの頃も足元に芝生の絨毯を広げ、ハミルを迎えてくれていた。
ふと大樹を見上げると、枝の上に幻を見る。
顔の左側に獣傷をつけた、利かん気の強い少女の幻。
(ここは百年前じゃない)
ハミルは頭を振って、もう一度枝を見る。
一瞬、幻はニコリと笑って姿を消した。
(これは私の願望。そして……あれも私の願望が生み出した幻)
パレードの最中、聞き覚えのある声に呼ばれた。
ハミルが振り返ると、建物の二階で驚いた顔をした少女の幻を見た。
(獣傷を左顔に作っている女性なんて、彼女しかいない……それだけじゃない。真っすぐでひたむきな瞳も、しなやかな体も――)
忘れたくても忘れられない、百年前をともに生きた少女。考えるだけで胸の内が熱くなる。
けれど、会えるはずもない少女。
辺りの雑草にすがりつきたくなるような嘆きが、ハミルの思考をかき乱す。
(いっそ忘れさせてほしい。ずっと彼女を覚えたまま、生き続けるなんて!)
ハミルは力なくうな垂れ、ジッと地面を見つめた。


