永劫の罪人 光の咎人

 声が詰まって、次の言葉が出せない。
 しばらくしてから、ビクターがうなった。

「んー……なあマテリア、どうせ昔に戻れないなら、今さら昔の自分に戻ろうとしなくていいんじゃないか? 昔の自分と違うって、誰だってそうだろ。子供は大人になっていくし、考えだって変わる。何かひどいことが起きて、性格そのものが変わるヤツもいる。昔のままでいられるってほうが無理な話だ」

 ビクターの言葉に、マテリアは目をまたたかせる。

「それはそうだけど……」

「変わるっていうのは悪いことじゃない。こう見えてオレは昔、不幸のどん底だったが、今は自由に旅ができるから幸せ真っ最中なんだ。不幸なヤツは、ずーっと不幸でいなくちゃいけないのか? 違うだろ?」

 言われてみると、確かにうなずける。
 マテリアの胸中で暴れていたものが、次第に鎮まっていく。

 剣が思うように振れないのは悔しいけれど、昔の自分に戻ろうとしなければ、気は楽になる。

 楽になりたい。
 けれど、何かがマテリアの中で引っかかった。

「……本当に私は、今を受け入れていいのか?」

「いいに決まってるだろ。せっかく生き返ったんだ、人生楽しまなきゃ損するぞ」

「本当に?」

「オレがいいって言ってるんだ。それで納得しとけ」

 強引に押し切られた気もしたが、誰かにそれでいいと言われるだけで嬉しい。
 自分を受け入れてくれる言葉と抱擁が心地よい。

 強張っていた体から力が抜け、マテリアはビクターへ体を預ける。
 包みこむ腕が温かくて、眠気が一気に押し寄せる。

(ホッとする。でも――)

 意識が薄れていく中、マテリアは一瞬自分の心と向き合う。

(――私は本当に、楽になっていいのかな?)

 ずっと胸に巣食っていたもやもやは消えた。
 それでも胸の奥がうずいて、再び涙がマテリアの頬を伝った。