廊下の中ほどへさしかかったとき、ふとロンドは壺の光を見つめる。

 小さな太陽が入っているかのような、生命力を感じさせる光。思わず感嘆のため息が出てしまう。
 しかし、この光がもたらす奇跡を思うと、ロンドの胸がさわぐ。

(どうして、この秘薬を作ることになったんだろ? ……死人還りの秘薬なんて)

 自分たちが信仰しているのは、光を崇拝するライラム教というもの。この教会では、世を照らす光を崇め、悩み苦しむ者に光の道筋を教えている。

 そんな人生に窮した者を救うために、光の法術を使い、癒しと加護を与える――それがライラム教だ。

 始祖ハーヴェイが提唱したライラム教は、光を唯一の神とし、光の精霊の力を借りた奇跡で人々を救い、世の理(ことわり)を説くというもの。

 教えの一説には、こう記されている。

『人は光の元に生まれ、いつか闇に還(かえ)る。御魂は闇に光を奪われ、静かに闇へなじむ。そうして光を失いし御魂は光を求めて、再び光の元へと生まれ出る。
 むやみに闇を拒むことなかれ。闇は再び光へ戻るための行程である』

 光は生、闇は死。
 光と闇を魂は行き交っており、その流れを恐れ、意味なく逆らってはいけないという教え。

 しかしロンドが手にしている秘薬は、その流れを変える物。

(何を考えていらっしゃるんだろう? 教皇ヴィバレイ様は……)

 気がつけば長い廊下は終わり、ロンドは奥の間へたどり着いていた。