一行が早朝にダットの街を出て二刻ほど。日は山の尾根から顔をのぞかせ、淡い蒼天に光を送る。
 つい一か月前まで萌黄の若芽を生やしていた木々も、今は緑を深くして日差しにきらめく。

 愛馬に乗って山道を登りながら、ロンドは冴えた空気を吸いこむ。
 後方からは馬に乗った数名の僧侶たちと、徒歩で護衛につく者たちの足音が聞こえた。

 今日は人手が足りず、ガスト以外の警護隊は教会の警護に回っている。
 その代わりに酒場などで雇った、腕に覚えのある者たちが護衛についている。その中にはマテリアとビクターの姿もあった。

 背筋を伸ばして空を眺めていると、前でロンドの馬の手綱を引いて歩くガストが振り向いた。

「ロンド様、疲れていませんか?」

「僕は大丈夫です。それよりも、ガスト様たちは大丈夫ですか? 街を出てから、ずっと休みを取らずに歩いて……」

 ロンドは並んで歩くマテリアとビクターを交互に見交わし、様子をうかがう。
 自分を護衛するために来てくれたのは嬉しいが、馬の都合がつかなくて、護衛についた者を歩かせるのは申し訳なかった。

「私は大丈夫だよ。ひと山歩いて往復するなんて、いつもやってたから」

「オレも同じく。馬車賃ケチって山越えするのが当たり前だったからな」

 気づかっているのかと思ったが、二人の表情は晴れ晴れとして血色がいい。
 後ろを振り返って、馬に乗った僧侶たちを見ると、彼らのほうが白い顔をして疲れを見せている。

「しかし……情けないなあ。これぐらいの距離、大人も子供も歩いてたのに。百年経って弱くなったなあ」

 マテリアも後ろを振り向いて、肩をすくめる。


 ロンドも馬から降りて、彼女の様子に固唾を呑む。