永劫の罪人 光の咎人

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 日の傾きで朱色に染まった大礼拝堂は、僧侶と、厳格に教会への信仰を教えこまれた世代である、年配の信者に埋めつくされていた。普段の静けさからは想像もつかない熱気がこもっている。

 人々が取り囲む中心には、光る水が入ったガラスの小瓶――死人還りの秘薬を手にしたロンドがいた。
 そして数歩進んだ先には、石の棺が開かれていた。

 ロンドのところから、棺の中に群青色の法衣を着せられたミイラが見える。

(……結局、止められなかった)

 どれだけロンドが訴えても、教皇ヴィバレイは話を聞かず、側近のシムを始めとするほかの僧侶たちも「教会のためです」の一点張り。ついに儀式までこぎつけられてしまった。

 この場にいる人々の視線がロンドを突き刺す。
 恥ずかしさで頬がほてり、思わずうつむく。

(やっぱり僕は秘薬を使いたくない。どうすれば……そうだ、わざと秘薬を落としてしまおう。予備の秘薬も使わせないように、法術で結界を張ろう。ハミル様の魂を僕たちの都合で、好き勝手にしていいわけがないもの!)

 でも、もしかすると秘薬を台なしにしたせいで、教会から追い出されるかもしれない。思わずロンドの小瓶を持つ手に力が入る。

「ロンド様、そろそろお願いします」

 横に控えていたシムが、そっとロンドへ耳打ちした。

「は、ははは、はい」

 ロンドの声が大きく揺れる。自分の思いと、人々の期待を裏切ることの板ばさみで、次第に体も小刻みに震え出す。

「ロンド様、ただ棺に秘薬を注げばいいのです。それぐらい、できましょう」

「も、もちろんです。さ、さ、下がっていてください」

 冷や汗を額へにじませながら、ロンドはやっとの思いで返事をする。
 どこか不自然な様子に、シムは貧相な眉をひそめる。

「こ、こんなに多くの人がいるので、き、緊張して……」

 早くシムに離れてもらおうと、ロンドは震えながら彼に微笑みかけた。
 いつものことかと言わんばかりに、シムはため息をついて後ろに下がった。