永劫の罪人 光の咎人

(ここが私の知っている店なら、確かこの近くに公園があったな。造ったばかりで、柵に這わせるツタの苗が植えられていたっけ。確かレムリムっていう――)

 視線を骨董店から前に戻すと、行く先に緑豊かな公園が見えてきた。
 公園を取り囲む柵には植物が這わされ、薄紅色の小さな花をたくさんつけている。

 ロンドが声を弾ませ、マテリアに笑いかけた。

「ちょうどレムリムの花が見ごろですね。公園の柵に這わせてあって、きれいなんですよ」

「……へえー、楽しみだな」

 笑い返しながら、マテリアは息を呑む。

 知らないものばかりの中に、ほんの少しだけ知っているものが混じっている。
 それが自分の知っているダットの街と、今いるこの街をつないでいく。

 公園へ近づくにつれ、レムリムの花がはっきりと見えてくる。

 昔は柵の足元にレムリムが絡まる程度だった。
 しかし目前の公園は、レムリムが柵を完全に覆ってしまい、満天の星空のように花を咲かせていた。

(やっぱり……ロンドが言った通り、ここは百年後のダットの街なんだ)

 不意にそれを理解してしまい、マテリアは感嘆の息を漏らす。

 百年前よりも活気があって、行き交う人々は誰もが笑顔だ。
 昔は王宮から、街で騒がしくしてはいけないと命令が出され、みんな息をひそめ、暗い顔で歩いていたような記憶がある。

 にぎわっている街のほうがいい。
 素直に嬉しく思う反面、マテリアの中によどみが生まれる。

(ずいぶん変わったなあ、ダットの街。でも何だろう? 街に愛着があったわけじゃないのに……寂しい)

 胸の奥が、ひどく焼けついた。

(こんな街……知らない)

 マテリアは表情を失う。

「あの……マテリア様、どうしましたか?」

 いつの間にかロンドが近づき、フードの下から顔をのぞかせ、心配そうにマテリアを見つめていた。

「いや、あんまり見事に花が咲いてるから、驚いただけだよ」

 今は深く考えないでおこう。そう思い、マテリアは笑みを浮かべて公園へ向かった。