永劫の罪人 光の咎人

「やっぱり百年前とは違いますか?」

 驚きで口を半開きにしながら、マテリアはロンドを見た。

「違うもなにも……別の街だよ。だって城がない」

「革命によって王政がなくなったときに、市民の手によって城は壊されたそうです。その後みんなで力を合わせて、ダットの街を造り直したんですよ」

 街並みに圧倒されながら、マテリアは目の前の現実を確かめるようにゆっくり歩く。
 と、靴から伝わる感触が硬くて、ふと顔を下に向ける。
 昔は土だった道には、延々と赤レンガが敷かれていた。

「何でわざわざレンガなんか敷いてるんだ? 硬すぎて歩くの疲れるのに……」

「そんなところから違うのか、そりゃあ戸惑うわな。マテリア、ちょっと向かい側を見てみろ」

 ビクターに言われ、マテリアは通りの向こうを見る。
 すると簡素な馬車が、悠々と通りすぎていった。

 カラカラと回る大きな車輪に目が行き、マテリアは馬車を見送る。
 振り向いた先の光景には、馬車が何台も道の脇に停まっていたり、遠くを走っているところが見えた。

 身動きしないマテリアに、ガストから呆れたような長息がもれる。

「まさか馬車が珍しいのか? 百年前にもあっただろ」

「確かにあったけど……馬車なんて王族しか乗っていなかったんだ。何でこんなにたくさん走っているんだ?」

 何度も小首をかしげるマテリアへ、ロンドが教えてくれた。

「時代が進んで、馬車が国中に普及したんです。今なら市民の誰もが、安いお金で乗れるんですよ。道にレンガが敷いてあるのも、土がむき出しだと、馬車が頻繁に往来して土ぼこりが舞って困りますし、ひどい轍ができてしまいますから」

 ロンドの説明にいったんは納得したが、やっぱりマテリアの違和感は消えない。

「そんな簡単に馬車へ乗らなきゃいいのに。歩かないと体が鈍るだろ」

 隣でビクターが、派手にふき出した。

「辺境の田舎者のセリフだな。旅人が歩く街道でさえ、レンガの整備が進んで、馬車が走ってるっていうのに。別の大陸には、馬よりも早く走って、大勢を運ぶ鉄の箱……汽車なんていう物も走ってるんだぞ」

 かろうじて馬車はわかったが、さらに未知の乗り物をビクターに言われ、あ然とマテリアの口は開く。