天井のステンドグラスから透ける光の中で、真珠のような珠(たま)がいくつも生まれて宙に舞う。

 それらは互いにぶつかって混じり合い、さらに大きな珠となって輝いた。

 太陽の光とは違う、真白く浮かぶ珠――光の精霊は辺りにきらめきを散らし、教会の大礼拝堂を明るく照らす。

 大きくなった精霊たちは光をまたたかせ、ゆっくり室内を旋回する。そのたびに精霊は輝きを増し、神聖な空気を織り上げていった。

 紺色の法衣をまとった僧侶たちが、次々に大礼拝堂へ入ってくる。彼らは悠然と歩き、中央の床にタイルで描かれた太陽の文様を囲んでいく。

 僧侶たちが持つ黄金の杖は、精霊の光を浴びて輝く。小さな光の粒が飛び、部屋の中心へ集まった。

 太陽の文様の上にあるのは、聖水が入った灰色の小さな壺。

 そして、壺の横には一人の少年僧がたたずんでいた。

 大人の中に混じって彼の背は頭ひとつ低い。
 一見すると少女と見まごうばかりの、丸く大きな深緑の瞳に小さな口。柔らかな茶色の髪は短いながらも波打っており、白磁の肌によく映えている。

 華奢な体で、まだ幼さを残した少年は頼りなく見える。だが、大勢の僧に臆することなく、背筋を伸ばして頼もしく振るまっていた。

 僧侶たちが歩みを止め、一斉に中央の少年へ体を向ける。

『天駆ける光の精霊、今ここに、その存在の徴(しるし)を見せたまえ。奇跡の路(みち)を創りし光の子に、我らの力を与えたまえ――』

 一人のズレもなく声がそろう。
 彼らの声は辺りに揺れながら天井へとのぼり、言霊は光の精霊に吸いこまれ、溶け合っていく。そうして精霊は少年にまとわりついた。