澄み渡った青空を、太陽は街の人々に姿を見せぬうちから照らし始める。
 直に日差しが当たらぬ朝の光は柔らかで、辺りを優しく包む。その様は光の精霊のように神々しい。

 人々がまだ寝息を立て、ベッドでまどろむ中。
 教会の中庭で、ロンドは一人たたずんでいた。

(ついに……この日が来たんだ)

 教皇ヴィバレイが亡くなり、三日が経った。

 気絶していたシムは捕らえられ、尋問をする前にあっけなく自白し、ビクターの無実が証明された。

 私欲のために教皇ヴィバレイを殺してしまったのだ。『永劫の罪人』と呼ばれたマテリアよりもシムの行動は罪が重い。恐らく司法も厳しい判断を下すだろう。

 そして百年前に多くの罪を重ねたハミルの処遇を皆と話し合い、ハミルを教会から破門にするという形になった。

 教皇の座が空席というわけにもいかない。

 すでに何度も儀式を執り行っていたロンドがその席に着くことを、誰も反対しなかった。

(まだ未熟な僕が、教皇になるなんて……)

 自信はなかったが、僧侶たちの準備を止めなかった。
 教皇になる決心はついたが、時間を置けば覚悟が揺らぐ気がした。