永劫の罪人 光の咎人


 かろうじて顔には生前の面影はあるが、老教皇の白髭は赤黒く汚れている。
 両目からは眼球が抜け落ちており、代わりにミミズのような小さい触手が目元で踊っている。

(どうしてこんなことに……)

 あまりの光景に吐き気がこみ上げ、ロンドは口元に手を当てた。 

 触手が素早く波打ち、何本もこちらへ迫ってくる。
 とっさにガストとビクターが剣を抜き、触手へ斬りつけた。

 次々と襲ってくる触手を払いながら、ビクターは苦々しく舌打ちした。

「僧侶の誰かが、教皇を生き返らせようとして秘薬を使ったな? それで自分を殺した男を見た瞬間に、怒りで我を忘れて……うわっ!」

 危うくビクターの頬に、触手がかする。
 まともに戦える相手じゃない。ロンドは急いで言霊をつむいだ。

『天駆ける光の精霊、今ここに、その存在の徴を見せたまえ。聖域を踏みにじりし者、その穢れし脚に償いの枷を』

 光の靄が化け物となったヴィバレイへ集まり、動きを抑える。
 本体と思しき触手の束は動きが止まらず身じろいだが、触手の襲撃は収まった。

 ビクターは口笛を吹き、「助かったぜ」とつぶやいた。

「これが秘薬の副作用の正体だ。我を忘れたら、こんな化け物に変わる。マテリアも、ハミルも……そしてオレもな」

 ビクターの言葉へ、マテリアが奥の間から視線を逸らさずに尋ねる。

「ビクターも?」

「詳しい話は後だ。まずはアレをどうにかしないとな」

 またたく間の戦闘で、ビクターの頬に汗が流れる。彼は手の甲でぬぐい、剣を構えた。