叫び声はなかった。

 ヴィバレイはひゅっと息を引き、その場へ倒れる。
 その背には短剣が突き刺さっていた。毒が塗ってあったらしく即死の状態だ。

 うろたえずにハミルはシムを見すえる。

「なんの真似ですか、シム」

「……私はこんな老いぼれの世話なんかで、終わりたくないんですよ。本当は数日前に賊が入ったとき、賊に殺してもらう予定でしたけど失敗しましてね。また賊が入ってくれて好都合でした」

 ふてぶてしくシムが鼻で笑う。人を殺した呵責など見当たらない。

 意外だったが、ハミルは驚かない。
 己の欲のために誰かを殺したい、と願う気持ちはよくわかる。

 ハミルが冷ややかな視線をシムに送る。

「私がヴィバレイ様を殺したのはシムだ、と言えばそれまでですよ?」

「承知の上です。でも、貴方にそんな気はないでしょう。私は聞いていましたよ? 貴方の離れでの一件を」

 なるほど、これで得心がいった。
 つまりヴィバレイを殺すために、こちらの都合を利用したということ。
 そして、より地位を高めるために、自分へ取り入りたいのだろう。