準備を終えて、ハミルがティーカップに茶を注ぐ。
湯気と一緒に甘みのある香りが、マテリアの鼻をくすぐる。
「熱いから気をつけて。よくマテリアは舌を火傷させていたからね」
「だってハミルの淹れてくれるお茶が好きだから、早く飲みたいんだ」
ハミルからカップを受け取ると、マテリアは口をすぼめて息を吹きかける。
湯気を何度か息で払うと、ゆっくり口に入れた。
香りと同じように柔らかな甘さが、飲んだ後から口の中に広がっていく。
「相変わらず飲みやすくて美味しいな。小さい頃はお茶なんて不味いと思ってたけれど、ハミルのお茶を飲んで、初めてお茶が美味しいって思えたんだよな。まさか百年後の世界で、また飲めると思わなかった」
「君にそう言ってもらえると、私も嬉しいよ」
半分飲み干したマテリアのカップへお茶をつぎ足すと、ハミルは自分のカップにも注いで向かい側に座った。
「すごく懐かしいな、こうやってマテリアと一緒にいられるのが……私が教皇になってからは会えなかったから、寂しかったよ」
「そんなに頻繁じゃなかったけど、ハミルが大きな行事で外に出てくるとき、見に来てたんだぞ。人が多すぎて近づけなかったけど」
今は違うみたいだが、昔は教皇が人前に出るというだけで、国中から人が集まっていた。
近くに行きたいのに、人の壁が厚すぎて近づけず……住む世界が違うことを、否応なしに押しつけられた。


