次の日を迎え、昼の執務をこなした後。

 ロンドとガストはそれぞれの愛馬に乗り、街の東端にある教会から、市街地を挟んで西側に広がる森へ入った。
 重なり合う木の葉の隙間から漏れる光が、うす暗い森を優しく照らしている。

 木々の間をすり抜けながら奥へ進むと、一軒の丸太小屋が見えてきた。
 かなりの年月が経っているのか、だいぶ丸太の色がくすんでいる。

「ここがアスタロ様のお住まいですか?」

 外套のフードを深くかぶったロンドは、白い愛馬の手綱を引いて歩みを止める。
 その隣に、栗毛の馬に乗ったガストが並んだ。

「はい。手紙にそう書かれていました」

 ガストは馬から降りると、ロンドの手を取って下馬を助ける。
 ゆっくりロンドが地面に降りると、ガストは二頭の馬の手綱をにぎった。

「しばらくお待ちください。今、馬を木につないできます」

 ブルルッと二頭の馬が小首を振り、口を鳴らす。「どうどう」とガストは馬の首をなでて落ち着かせると、手頃な木まで歩かせる。

 ロンドが小屋を眺めていると、ゆっくり扉が開いた。

 小屋から一人の老人が現れる。

 顔の皺はヴィバレイよりも多く、干からびた果実のようだ。
 まぶたや頬の肉はだらりと垂れており、瞳が隠れて見えない。
 腰は少し曲がっているが、しっかり二本の足で体を支えている。
 背丈はガストよりも頭ひとつ低いが、百才すぎの老人とは思えない長身だった。

「……お前らは誰だ?」

 低く濁った声だが、年齢を感じさせない覇気ある口調だ。
 ロンドは頭からフードを外し、老人と向かい合う。

「ぼ、僕はロンドと申します。アスタロ様にお話をうかがいたくて参りました」

 こちらの問いかけに、老人は反応を返さない。いきなりの来訪で困惑しているのか、目元や眉間の皺を深くするばかりだ。