二人の背後にいきなり現れた宮部。
お陰で永倉は後退って壁にぶつかった。
「師匠、って……凜のか?」
そ、と頷いた宮部は竹刀を手に取る。
「俺は見た事ないけど、有名な方らしいよ」
丁度斎藤が負けたのを見て、宮部は凜の下へ
歩いていく。
「凜、次は俺ね」
「結局割り込みかよ…」
原田の空(ムナ)しい呟きは誰にも届く事なく、
わざわざ新選組の稽古場で会津藩士の二人の
試合が始まった。
「て言うか、総司はどうしたんだよ?」
「総司は昼の巡察に行ってる」
藤堂(トウドウ)の問いに、凜が宮部の背に一発浴
びせながら答える。
まさか凜に聞こえるとは思っていなかった藤
堂は、少しだけ気まずそうに笑った。
「で、何で総司?」
凜が鋭い目を向けると、藤堂は原田に視線を
遣った。
「それはお前、総司と恋仲だからだろ?」


