流石にまだ運動は出来ないが、歩くのに不自由はなくなった。
そして沖田は、相変わらず毎日凜の見舞いに来る。
昨日散歩に行こうと約束をしていたので、凜は袴に着替えようと手に取る。
いつも着流しばかりで、袴は久し振り。
散歩は、雰囲気を出す為にか待ち合わせをしている。
地図を渡されたが覚えはない。
考え事をしながら袴を広げた瞬間、何かが音を立てて床に落ちた。
「………櫛…?」
綺麗な桜の模様が描かれた、とても上品で綺麗な櫛。
それを見た瞬間、凜の瞳に万年桜が映った。
凜は反射的に走りやすい袴に着替え、櫛を持って藩邸を飛び出していた。
まだ体力が戻っていなくて、走るのは辛い。
だがそれ以上に、今すぐ行かなければいけないような気がしていた。
「はぁ、はぁ……っ、はぁ…」
傷は塞がっていても、痛いものは痛い。
脇腹を押さえながら、それでも走った。


