誠ノ桜 -誠の下で-




「あ…っ」


慌てた凜は思わず割れた皿に手を伸ばし、案の定指を切る。


「凜、大丈夫?」


沖田に『大丈夫』と言おうとした凜は、自分の切った指を見て言葉を失った。

傷が、既に塞がり初めている。


「え…?何、で………」

「凜?」


自分が“桜の子”であるという記憶も、失っていたのだ。


「嫌、だ……何…、いや……私っ……!」

「凜っ!!」


自分自身に怯えて震える凜を、沖田は咄嗟に抱き締めていた。


「凜、落ち着いて」


優しい声色に、凜は深呼吸をする。

震えも治まると、凜は沖田の背中に同じように腕を回した。


「え…?」

「落ち着く……この匂い」


ぎゅっと、記憶を手繰り寄せるように抱き着く。

思い出せそうで、思い出せない。


「……沖田さんは、私が恐くないの…?」

「そんなの当たり前だよ」


響いて来る声が心地好くて、凜は目を閉じた。