誠ノ桜 -誠の下で-




松平と早瀬が気を利かせて部屋を出た後、宮部は優しく問い掛けた。

凜が静かに首を横に振るのを見て、宮部は寂しげに「そっか」と呟く。


「……俺、ちょっと出てくるね」


沈黙の中そう言い残すと、宮部も部屋を出ていった。


凜は一人、ゆっくり起き上がる。

傷が痛くて辛いが、寝てなどいられなかったのだ。


―――記憶がない…

それぐらい分かる。


凜の中では、松平と早瀬しか分からない。

生まれた時からずっと藩邸で暮らしていると思っている。


何より――二人以外と関わった事は、ないはずだと。


「……ぅ…」


暫く考えていると、目眩がして頭を抱える。

頭を打ったのだろうかともう一度横になった時、襖が開いた。


「………凜」


沖田だった。

宮部が連れて来たらしく、後ろにいる。

沖田が中に入っても宮部は入らず、そのままどこかへ行ってしまった。


「凜、俺は……分かる?」