誠ノ桜 -誠の下で-




「松平様、と……龍飛…」


傷が痛むのか弱々しげに、だが明らかに二人の名を呼んだ。

宮部達三人は、状況が理解出来ない様子で固まっている。


「記憶喪失………」


ぽつり、と犬山が呟く。


「え?どういう事だ、暁」


先程から三人の様子が変だと思っていた早瀬は、俯く犬山を覗き込む。

今にも、涙が零れそうだった。


「凜、僕の事分かりませんか!?」


犬山に詰め寄られても、凜は眉を寄せてただ見つめるだけ。

まるで“分からない事を思い出す”ようなその仕草に、犬山は部屋を飛び出した。


「何だよ、それ……」


氷上もまた、犬山の後を追うように出ていってしまう。


「俺は宮部 薫。凜はいつも薫って呼んでた」


宮部はそんな凜に笑顔を向け、明るくそう言った。

それには松平も早瀬も驚いた表情を見せている。


「覚えてない?」